fc2ブログ

【報告範疇】川崎市監査委員は報告範疇を用意していない

 川崎市監査委員は、「監査等の結果に関する報告等への記載事項」について定めている監査基準第17条で第4項を次のように規定している。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 3月25日付け監査報告では、「7 監査の結果」の冒頭で次のように記載している。

 川崎市監査基準(令和2年監査訓令第1号)に準拠し、前述のとおり監査した限りにおいて、おおむね適正に執行されているものと認められたが、次のとおり改善措置を要する事項があった。


 この記載が「是正が必要である事項」はなかったとの意味なのかどうかは判然としないが、是正が必要なはずの不納欠損処分を怠っている事案も報告されているところから、監査基準でいう「是正又は改善が必要である事項」を監査報告では「改善が必要である事項」と言い換えていると理解せざるを得ない。ちなみに、監査基準制定前の平成31年3月25日付け監査報告では次のように記載していた。

 監査の結果、おおむね適正に執行されているものと認められたが、次のとおり改善措置を要する事項があった。


 いずれにせよ、川崎市監査委員は異状報告の範疇を明確にしておらず、3E報告をする範疇も用意していないようだ。もっとも、異状報告の記載は丁寧であり、3E報告は可能であろう。ただ、上記の監査報告には記載がない。

【報告拝見】熊本県監査委員が改善の方向が読み取れない指摘

 熊本県監査委員が改善の方向が読み取れない指摘をしている。熊本県監査委員が9月24日付けで公表した監査報告には「指摘事項」として次の事案が記載されている。

(国への事業報告誤りに伴う年度更正について)
 事業実施に伴う事務において、次の課題がある。
(1) 国への事業精算報告に誤りがある。
(2) 支払い後に、国への事業精算報告に事務処理を合致させる手段として財務システムの機能を使用し、年度更正処理を行っている。
 精算報告の際には、組織的なチェックの強化により再発防止に努め、熊本県会計規則等の規定に基づき適正な事務処理を行うこと。


 どうも、国へ事業精算報告をする際に事実と異なった記載をしており、事実を記載した財務記録を精算報告と整合するよう改ざんしていることを指摘しているようだ。年度更正処理を点検していて発掘した事案と思うが、どう改善させようとしているかが分からない。おそらく、事実と相違した年度更正処理を指摘しようとしたが、それは事業精算報告の修正につながり、補助金等の返納につながるので修復困難であるという説明があり、それを受けて「課題」という表現にとどめたのだろう。そうであるなら、「精算報告の際には、組織的なチェックの強化により再発防止に努め」は、「事業実施に当たっては、年度内に完了するよう留意し」となるところ、それではまずいという判断があったのではなかろうか。いずれにせよ、いろいろと想像が膨らんでくる案件である。
 この「指摘事項」概念について、熊本県監査委員は、この監査報告で次のように説明している。

「指摘事項」とは、以下のような事柄に該当し、改善が必要とされる課題である。
(1) 法令、条例、規則又は通知・通達に違反し、事務の執行が不適正となっているもの
(2) 未収金解消対策が的確に講じられていないもの
(3) 予算の執行又は財産管理等において、適正を欠くもの
(4) 故意又は重大な過失により、不経済や損害を生じさせたもの
(5) 経済性、有効性又は効率性が著しく低いもの
(6) 事務・事業の執行に当たり、是正又は改善が必要であると認められるもの
(7) 前年度監査において注意事項とされていた事項で是正又は改善がされていないもの


 「改善が必要とされる課題」と定義していて、「是正」概念がないのは不思議である。第7項目では「改善」と「是正」を並列させているので、「改善」が「是正」を包含しているわけでもないようだ。ちなみに、その「注意事項」は監査報告には記載しないものの、同時に公表しており、その公表文では、「注意事項」を「注意事項とは、監査結果のうち指摘事項には至らないが、早期の是正措置を促す必要があるものです。」と説明している。

【報告範疇】熊本市監査委員は報告範疇はあるが、定期監査を財務監査に限定している

 熊本市監査委員の「令和 2 年度(2020 年度)監査報告書」には、報告範疇として、「指摘事項」と「意見」という記載があるが、その説明はない。
 内容的には、「指摘事項」は統制逸脱、「意見」は統制不備である。個々の報告は長文であることから3E異状を「意見」として報告できる可能性はあるが、2項監査を行なうこととしていないため、困難が予想される。

【古いメモ】県の外郭団体監事に議員OBが就任する慣行が昔はあった

 共同が2003年5月23日に配信した「引退県議7人が“天下り” 愛知県関係団体の監事に」によると、統一地方選を機に引退した愛知県議7人が、同県中小企業振興公社など県関係の7団体の監事に就任する見通しという。県人事課によると、県議の“天下り”は1985年に県スポーツ振興事業団が迎え入れたのが最初で、最近では各団体で慣例化しているとのこと。監事に就任するのは、会派別に自民5人、民主、公明各1人。いずれも当選3回から8回の元県議で、各団体の理事会で認められれば6月1日付で就任するという。県は各団体から元県議の紹介要請を受け、県議会各会派と調整した上で人選するとの由。記事によると、監事は各団体とも決算などを扱う会計監査を担当し、非常勤で週3回程度出勤し、報酬は月額31万5千円。任期は2年で、再任される場合もあるとのこと。団体ごとに2人程度の監事がおり、うち一人が県議OBという例が多く、名古屋市でも都市整備公社などに市議OBがいた例があるという。県人事課は「どの人も県議として長年県政にかかわり、深い知識がある。各団体の運営に知識を役立ててもらいたいと考えた」と話していると記事は伝えている。

 さすがに、この慣行は廃止されているようだ。

【報告範疇】北九州市監査委員は報告範疇はないが長文で3E報告可能で実績あり

 北九州市監査委員は7月30日付け監査報告の「4 監査の結果」「(2)子ども家庭局」「イ その他事務」「(ア)効果的な事業の執行について(子育て支援課)」で、次のように3E異状を報告している。

 放課後児童クラブ消防設備保守点検業務委託は、放課後児童クラブで使用する市有建築物において、年2回の消防用設備等の法定点検及び保守を行うものである。令和元年度の当該事業において、対象となる85施設で、同じ消防用設備機器点検を令和元年12月から令和2年3月までの短期間で2回実施しており、効果的な事業運営となっていなかった。
 消防法では、消防用設備等について、消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、設置し、維持しなければならず、定期に点検しなければならないとされている。また、同法施行規則及び消防庁告示により、消防用設備等の点検の期間は6月とされている。
 事業の有効性と経済性の観点から、消防用設備等の点検周期の見直しを検討し、より適切な施設維持管理に努められたい。


 惜しむらくは、どうしてそのような慣行になっていたのか背景が記載されていない。

【業務説明】浜松市監査委員はパンフレットで監査基準に言及している

 浜松市監査委員サイトに「浜松市の監査についてわかりやすくまとめたものです。ぜひご覧ください!」として掲出されている「令和3年度版 監査のあらまし」(浜松市監査委員事務局)は、{1 監査の目的」「2 監査等の種類とその概要」「3 監査の効果」「4 監査体制」「5 令和2年度の監査等実施状況」「6 各監査等の主な事例」で構成されているが、監査基準には「2 監査等の種類とその概要」の冒頭で次のように触れている。

  「浜松市監査基準」に準拠した監査委員による監査等を通じて、適正かつ効率的な行財政運営が行われるとともに、行政の透明性確保と市民への説明責任が果たされるよう、市民の視点で市政運営の監視、評価及び指導を行っています。


 この箇所は、令和2年度版でも次のように記述していた。

 監査委員による浜松市監査基準(令和2年4月1日全部改正)に準拠した監査を通じて、適正かつ効率的な行財政運営が行われ、行政の透明性確保と市民への説明責任が果たされるよう、市民の視点で市政運営の監視、評価及び指導を行っています。


 ちなみに、基準制定前の令和元年度版では次のように記述していた。

 監査委員による監査を通じて、適正かつ効率的な行財政運営が行われ、行政の透明性確保と市民への説明責任が果たされるよう、市民の視点で市政運営の監視、評価及び指導を行っています。


 毎回、見直しを行なっていて好感が持てる。
 なお、このときの「1 監査の目的」の記載は次のとおり。

 監査は、市の財務に関する事務の執行や経営に係る事業の管理等について、下記のチェックポイントを視点として行います。市政運営の監視、評価及び指導を行うことで、市の行財政の適正な運営に資することを目的としています。


 そして、3年度版の記載は次のとおりで元年度版のままである。

 監査は、市の財務に関する事務の執行や経営に係る事業の管理等について、下記のチェックポイントを視点として行います。市政運営の監視、評価及び指導を行うことで、市の行財政の適正な運営に資することを目的としています。


 残念ながら、浜松市監査基準で「監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為の目的」を標題とする第2条第1項で次のように表現していることとは微妙にずれている。

 監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為は、市の事務の管理及び執行等について、法令に適合し、正確で、経済的、効率的かつ効果的な実施を確保し、住民の福祉の増進に資することを目的とする。

【業務説明】神奈川県監査委員は業務説明に監査基準を盛り込み損ねた

 神奈川県監査委員は、8月に掲出した「令和2年かながわの監査」で、「監査のしくみ」の構成を前年と同じにしていて、監査基準の説明を盛り込み損ねている。

【報告範疇】横浜市監査委員は3E異状を報告できる範疇を有している

 横浜市監査委員は、令和2年度監査報告書で、監査結果を「指摘事項」と「意見」に分類している。その「指摘事項」については、「法令等に違反する事項又は不当な事項であり、改善が必要なもの、又は経済性、効率性及び有効性の観点から改善が必要なもの」とし、「意見」は「監査委員が指摘事項等を踏まえ改善に向けて付す見解、又は監査の対象範囲にかかわらず組織及び運営の合理化に向けて付す見解」としている。つまり、3E異状は「指摘事項」又は「意見」として報告するとしている。
 しかし、報告されている「指摘事項」は統制逸脱、「意見」は統制不備であり、3E異状の報告は見受けられなかった。「指摘事項」は、当為と事績を対比させた2センテンス構成であったが、「意見」と長文であり、3E異状の報告は可能であろう。
 なお、「第2 監査の結果等」「1 財務監査」「(1) 経理事務関係」の「カ 内部統制」では、事務処理ミスの発生についてヒアリングなどで調査して結果を報告した上で「意見」を記載していることは好感が持てる。

新潟県監査委員の職歴

 公式サイトで監査委員の職歴を示しているところは少ないが、新潟県監査委員は職歴を示している。それに拠ると、4人の監査委員のうち二人は議選委員、識見委員二人は「元新潟日報社執行役員長岡支社長」と「元新潟県病院事業管理者」。マスメディアと県OBという慣行があるのかもしれない。

金融庁が大手町の監査法人を1か月業務停止に処分

 金融庁サイトは8月6日に「監査法人の処分について」を掲出し、千代田区大手町の監査法人原会計事務所に対して、公認会計士法第34条の21第2項に基づき業務停止1月(令和3年9月1日から9月30日まで)の処分を同日付けで行ったと発表した。

公認会計士法(昭和23年法律第103号)第34条の21第2項
 内閣総理大臣は、監査法人が次の各号のいずれかに該当するときは、その監査法人に対し、戒告し、第三十四条の十三第一項に規定する業務管理体制の改善を命じ、二年以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は解散を命ずることができる。
一 社員の故意により、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。
二 社員が相当の注意を怠つたことにより、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明したとき。
三 この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反し、又は運営が著しく不当と認められるとき。
四 前項の規定による指示に従わないとき。


 処分理由は次のとおりで、特に粉飾を看過してということではなく、癒着が問題のようだ。

 当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、令和3年2月26日、金融庁は公認会計士・監査審査会(…)から行政処分勧告を受け、調査を行った結果、下記ア.からウ.までに記載する事実が認められ、当該事実は公認会計士法(…)(…)第34条の11第1項に規定する「利害関係規定違反」及び同法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当と認められるとき」に該当する。


 ちなみに、「利害関係規定違反」は次のとおり。

第34条の11第1項 監査法人は、財務書類のうち、次の各号のいずれかに該当するものについては、第二条第一項の業務を行つてはならない。
一 監査法人が株式を所有し、又は出資している会社その他の者の財務書類
二 監査法人の社員のうちに会社その他の者と第二十四条第一項第一号に規定する関係を有する者がある場合における当該会社その他の者の財務書類
三 会社その他の者の財務書類について監査法人の行う第二条第一項の業務にその社員として関与した者が、当該財務書類に係る会計期間又はその翌会計期間(以下この号において「関与社員会計期間」という。)内に当該会社その他の者又はその連結会社等の役員又はこれに準ずる者となつた場合における当該関与社員会計期間に係る当該会社その他の者又はその連結会社等の財務書類
四 前三号に定めるもののほか、監査法人が著しい利害関係を有する会社その他の者の財務書類


 日経サイトが5月17日に掲出した「信越ポリマー、監査法人をEY新日本に交代」は、東証一部上場の信越ポリマーが17日、監査法人を中堅の原会計事務所から交代すると発表したと報じている。記事によると、公認会計士・監査審査会が2月、同監査法人の一部企業への報酬依存度の高さなどを問題視し、金融庁に行政処分などを勧告したことに対応したもので、新たにEY新日本監査法人を選んだとのこと。公認会計士・監査審査会は原会計事務所について「倫理規則に違反する『特別監査報酬』の受領や『贈答』を行っていること」なども不適切だと指摘していたと記事は伝える。

山梨県監査委員が監査のペーパーレス化に向けた試行の検証結果を掲出している

 山梨県監査委員サイトの「ようこそ監査委員のホームページへ」と題されたページは、「お知らせ」という標題の下に次の項目が置かれている。階層構造が明確でないが、内容的にはこの三つを最上位階層として想定していると思われる。

監査結果を公表しました。
決算審査等意見書を知事に提出しました。
監査委員による監査のペーパーレス化に向けた試行を開始しました。


 そして、最後の項目の下に次の記述がある。

監査委員による監査のペーパーレス化に向けた試行の検証結果を作成しました。
・10月14日から監査のペーパーレス化に向けた取組の試行を開始しましたが、令和2年度の定例監査の日程がすべて終了しましたので、その効果について検証をしました。
監査のペーパーレス化に向けた試行の検証結果について(PDF:122KB)


 サイトに掲載したのはグッドジョブだが、サイト設計の変更まで行かなかったのは残念。

【報告範疇】千葉市監査委員は3E異状を報告する範疇を有し、報告事例もある

 千葉市監査委員は3月31日付け定期監査報告で、次のように述べている。

 なお、以下において「指摘」とは、不適切な事案に対し、是正、改善等の措置を求めるもの、「意見」とは、事案に対する見解を示したものである。


 すなわち不適切でない事案についても「意見」として報告する姿勢を示している。興味深いのは、「事案」「問題点」「指摘」と3項目で報告していること。中には、これに、次のように「意見」を追加して4項目としている例もある。

エ 物品の管理を適正に行うべきもの(中央区役所)
(ア)事案及び問題点
 現地調査において、物品の管理状況を抽出して確認したところ、9点(うち重要物品4点)のうち3点(うち重要物品1点)が確認できず、また、2点が廃棄処分されているにもかかわらず、引き続き備品明細一覧表に記録されていた。
 なお、確認ができなかった物品のうち、重要物品については、監査期間中に確認することができた。
(イ)原因
 物品会計規則に基づき、会計室から年2回、備品の確認を求められているが、 確認が十分に行われていなかった。
 また、中央区役所は、令和元年度に移転しており、移転時の物品管理が不十分であったと考えられる。
(ウ)指摘
 物品の管理については、規則等に基づき適正に行われたい。
(エ)意見
 本市においては、令和4年度末から新庁舎への移転が予定されていることから、移転時に物品の紛失等が生じることのないよう物品管理に万全を期すことを要望する。


 これなどは、「意見」として別記する意味は不明であるが、次のような「意見」も報告している。

ア 負担金支出の必要性について検証が求められるもの(経済農政局)
(ア)事案
 負担金の支出が長期化しているものについては、どの程度有益な効果が得られるのかなどの十分な検証が行われているか疑問視されるものが見受けられた。
(イ)原因
 負担金等を最初に支出する段階では、その必要性を十分検証した上で予算化し、支出しているところである。しかし、負担金等は、毎年度、定期的に支出する場合が多く、その後、継続して支出する段階では、どの程度有益な効果が得られるのかなどの十分な検証がされないまま、支出が長期化してしまう場合がある。
(ウ)意見
 各種団体等に負担金等を支出するに当たっては、どのような点で市施策に貢献するのか、当該団体でなければ期待する事業効果を得られないのかなど、定期的にその必要性を検証することが必要と考える。
【該当例】一般社団法人千葉農林水産統計協会会費(経済農政局)


 これなどは、事案の説明が具体性を欠いているものの3E報告とみて良いだろう。

外国人材の受入れに係る施策に関する国会要請レポート

 会計検査院の公式サイトは、「令和3年7月16日、国会法第105条の規定による検査要請を受諾した下記の事項について、会計検査院法第30条の3の規定により、検査の結果を報告しました。」として「外国人材の受入れに係る施策に関する会計検査の結果について」(概要(PDF形式:65KB)報告のポイント(PDF形式:680KB)本文(PDF形式:904KB))と題した報告を掲出した。
 この報告について、朝日新聞サイトは「技能実習生の失踪、2割検査せず 監督機関の人員不足で」と題した記事で、外国人技能実習生が実習先から失踪した際に、国の監督機関が実習先に行う実地検査について会計検査院が調べたところ、2019年の半年間では失踪件数の2割で検査をしていなかったことがわかったと報じている。

続きを読む

【業務説明】岩手県監査委員は挿入箇所を間違えた

 岩手県監査委員事務局が作成している「令和2年度監査年報」では、監査基準を策定したことには触れていないが、「第 1 令和2年度監査の執行状況」「1 実施計画」「(1) 基本方針」で次のように不思議な言及をしている。

 県の事務事業の執行について、内部統制や改善のプロセスを確認するとともに、予算執行の状況にも留意しながら、正確性、合規性の観点はもとより、経済性、効率性及び有効性の観点からも監査等を実施するものとする。
 定期監査は、監査委員監査基準に基づき、対象となる全機関に対し、財務監査と行政監査を総合的・一体的に実施するとともに、監査機能の強化を図るため、内部統制体制整備、運用に伴い、内部統制に依拠した効果的かつ効率的な監査の実施により、リスクの高い事務事業に重点化した監査を実施するものとする。
 また、財政的援助団体等監査、指定金融機関等監査、現金出納検査、決算審査及び財政健全化判断比率等審査を厳正に実施するものとする。
 なお、社会的関心が高い課題や早期に改善すべきと認められる事項について、行政監査を実施するものとする。


 すなわち、定期監査についてだけ監査委員監査基準に基づいて実施する、というように読めてしまう。おそらく、次の「平成元年度監査年報」の構成を活かそうとし過ぎた改案だ。

 県の事務事業の執行について、内部統制や改善のプロセスを確認するとともに、予算執行の状況にも留意しながら、正確性、合規性の観点はもとより、経済性、効率性及び有効性の観点からも監査等を実施するものとする。
 定期監査は、対象となる全機関に対し、財務監査と行政監査を総合的・一体的に実施するとともに、内部統制体制の整備に伴い、より監査の実効性を高めるため、リスクの高い事務事業に重点化した監査を実施するものとする。
 また、財政的援助団体等監査、指定金融機関等監査、現金出納検査、決算審査及び財政健全化判断比率等審査を厳正に実施するものとする。
 なお、社会的関心が高い課題や早期に改善すべきと認められる事項について、行政監査を実施するものとする。


 つまり、前年の文章に「監査委員監査基準に基づき、」を挿入する箇所を間違ってしまったようである。第1パラグラフに挿入すれば問題は無かっただろうに。

【報告範疇】福岡市監査委員は報告範疇は用意していないが短文ではない

 福岡市監査委員の5月27日付け監査報告では、{4 監査の結果}を次のように書き出している。

 監査の結果は,おおむね良好と認められたが,一部の局等において注意,改善を要する事項が見受けられた。


 つまり、報告する異状を「注意,改善を要する事項」と表現している。そして、その報告では、例えば次のように記述している。

エ ××局
 借損料等の支払いに長期日数を要していたものについて注意を求めるもの
 借損料等の支出については,履行完了確認後,債権者からの請求によりその対価を支払わなければならない。また,債権者から請求が行われない場合は,債権者に対して催促を行い,速やかに支払う必要がある。しかしながら,令和元年度「Jリーグ入場券(単価契約)」外3件の支出において,履行完了確認後,支払いまでに長期日数を要していた。
 今後,速やかに事務処理を行うよう十分注意されたい。
      (××課)


 すなわち、統制逸脱の認定に必要な対象事績、当為、原因の3要素のうち、原因以外の2要素は丁寧に記述しており、これだけの記述量があれば3Eの報告も困難では無いと思う。ただし、この報告に記載されているのは、「注意を求めるもの」と表現されている統制逸脱だけである。

【業務説明】福岡県監査委員は「監査委員制度の概要」ページにおいて監査基準を説明

 監査委員監査基準は法律との重複が多いため、制度説明で監査基準に言及するには工夫を必要とする。福岡県監査委員は公式サイトの「監査委員制度の概要」ページを「監査委員の職務」「監査委員の構成」「監査基準について」の3項に分かち、「監査基準について」の説明は、次のように監査人としての規範の説明をすることで重複感をなくしている。

 監査委員は、その職務を遂行するに当たって、法令に特別の定めがある場合を除くほか、監査基準に従い、常に公正不変の態度を保持して監査等を行うこととされています(法第198条の3第1項)。
 この監査基準は、監査委員が合議により策定し、公表することとされています(法第198条の4第1項~第3項)。
 本県における監査基準は、以下のとおりとなっています。


 惜しむらくは、「について」があることで、標題間のバランスを失している。本当は「監査委員の××」としてバランスを取りたかっただろうに残念だ。「監査委員が従う基準」とでもすれば、まだバランスがとれただろうに。

【業務説明】埼玉県監査委員はパンフレットでも分掌規程でも監査基準に言及していない

 埼玉県監査事務局が公式サイトに掲出している「令和2年度事務概要」は監査基準に言及しておらず、そこに記載されている「監査事務局の組織及び事務分掌」にも、「監査計画及び実施計画の取りまとめに関する事務」は規定されているのに監査基準は規定されていない。

【業務説明】相模原市監査委員は監査事務の説明で監査基準に言及している

 相模原市監査委員が公式サイトに掲出している「監査事務の概要」(PDF 164.3KB)には、次のように監査基準が言及されている。

1 監査とは
 監査とは、地方自治法等の法令に基づき、監査委員が市の財務に関する事務の執行等について公正不偏の立場から監査するもので、本市では監査基準、監査等の基本方針及び監査計画を策定し実施しています。
 監査委員は、市長の指揮監督から職務上独立した独任制の執行機関であり、本市では、識見を有するものから選出された委員2人と議員から選出された委員2人の4人の監査委員がおります。識見を有するものから選出された委員2人のうち1人が代表監査委員(常勤)となっています。
〔以下略〕

【業務説明】新潟市監査委員は業務概況で監査基準に言及しているが構成に無理が生じている

 新潟市監査委員は公式サイトに「令和2年度 監査概要」(PDF:895KB)を掲出している。その「Ⅰ 監査の概要」は「1.監査委員とは」、「2.新潟市の監査委員」、「3.監査等の種類」、「4.監査の基準」、「5.監査結果の処理」、「6.監査結果に基づく市長等の措置」、「7.監査の流れ(定期監査)」で構成されている。この構成は、平成29年度版も「7」以外は同様であり、28年度版では「4」が「監査の基本方針」となっていた。29年4月1日から監査基準を制定施行し、2年度から法律に基づく監査基準に改定しており、「監査の基本方針」を「監査基準」に置き換えた形となっている。このため、構成上の無理が生じており、令和2年度版では「4]の冒頭を次のように記載している。

 前記の各種監査は「新潟市監査委員監査基準」に基づいて実施しています。以下はその主な内容の抜粋です。


 つまり、実施基準だけを念頭に置いているため、「前期の各種監査」を監査基準で定義していることを失念した表現となっている。
 ちなみに、平成28年度版の「4.監査の基本方針」の冒頭は次のように記載されている。

 監査にあたっては、公正で市民に信頼される市政運営の推進に資するため、次の基本方針に基づき実施しています。


 このときは、基本方針として、監査の観点、リスクを考慮した監査、フォローアップと内部統制との連携、市民への説明責任を記載していた。2年度版では、基準の性格、リスクを考慮した監査、監査の観点、連名での公表を説明している。

【業務説明】山口県監査委員は公式サイトでの業務説明で監査基準に言及している

 山口県監査委員は、公式サイトの業務説明をしている「監査委員の役割」ページで、次のように監査基準に言及している。

 監査委員は、地方自治法に定められた県の独立した執行機関で、県などの行財政の公正さと効率性などの確保を図るため、監査を行っています。
 監査委員は、「山口県監査委員監査基準」に従い、監査、検査、審査等の行為を適切かつ有効に実施することとされています。
 また、監査委員は、監査の結果などを公表しています。


 事務分掌には「監査基準」は規定されていない。

【業務説明】島根県監査委員の事務分担表に監査基準の記載はあるが、業務紹介には無い

 島根県監査委員は、公式サイトでの業務説明に監査基準は登場しないが、次の事務分担表での記載はある。

(1) 監査第一課
① 監査計画の調整及び委員協議に関すること。
② 一般会計、特別会計及び公営企業会計(病院事業会計を除く。)並びに基金に係る財務監査に関すること。
③ 一般会計、特別会計及び公営企業会計(病院事業会計を除く。)並びに基金に係る現金出納検査に関すること。
④ 一般会計、特別会計及び公営企業会計(病院事業会計を除く。)に係る決算審査並びに基金運用状況審査に関すること。
⑤ 住民監査請求監査に関すること。
⑥ 職員の人事、研修及び庶務に関すること。
監査基準に関すること。
⑧ その他監査第二課の所掌に属さない事務に関すること。

【業務説明】岐阜県監査委員事務局は「監査結果のあらまし」で監査基準を説明

 岐阜県監査委員事務局の「監査結果のあらまし ~令和2年度の監査結果から~」(令和3年4月)は、「1 監査委員制度」に「岐阜県監査委員監査基準」の項を設けて、次のように説明している。

 監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為の適切かつ有効な実施を図るための基準で、監査の範囲、実施手続、公表などについて記載されています。

<監査結果及び措置状況の公表について>
 「岐阜県監査委員監査基準」に基づき、監査の結果に関する報告の内容等を、県ホームページで公表しています。また、監査の結果に関する報告等を受けた者が、結果に対して行った措置の状況についてもホームページで公表しています。


 ちなみに、岐阜県監査委員監査基準には公表するとは定めているが、ホームページで公表するとは書いていない。また、報告の公表は地方自治法に基づく法定義務である。どうして、このような記載をしているか理解できない。

【業務説明】秋田県監査事務局の業務内容で「監査基準」が明示されていない

 秋田県監査事務局サイトの「監査委員事務局の業務案内」ページには、業務内容が分担別に説明されている。その業務として、法定業務ではない「監査等執行計画」の記載はあるが、「監査基準」の記載は無い。おそらく、「諸規程」で読ませようとするのだろうが、監査基準が意識されていない感じがする。

【報告範疇】広島市監査委員は報告範疇はないが異状記載は長文で3E報告可能

 広島市監査委員が令和2年6月1日付けで公表した都市整備局監査報告は、「5. 監査の結果」を次のように記述している。

 次に述べる事項を除いておおむね適正に処理されていた。
(屋外広告物の許可事務について)
 屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置しようとする者は、あらかじめ市長の許可を受けなければならず、許可の期間が満了したときなどは当該屋外広告物等を遅滞なく除却しなければならない。なお、許可期間は1年以内であるが、申請に基づき更新できるとしている。
 当該許可事務は、各区役所維持管理課(以下「区維持管理課」という。)が道路占用物件等管理システム(屋外広告物許可業務)及び財務会計システム(以下「システム」という。)を用いて行っているが、許可更新や除却処理について、システムの入力誤りや更新手続漏れ、手続漏れに伴う手数料の不徴収などの事務処理誤りが見受けられた。
 ついては、区維持管理課と制度所管課である都市整備局都市計画課とが連携して、チェック体制の整備や効果的な研修の実施など内部統制の改善を図り、適正な事務処理に努められたい。


 これから判断すると、広島市監査委員は報告範疇という概念がないようだ。一方、ワンセンテンスで異状を記載することなく丁寧に記載する慣行があるので、3E異状を発掘しても報告に支障はなさそうだ。

【業務説明】鳥取県監査委員はパンフレットで監査基準に言及していない

 鳥取県監査委員事務局が4月に取りまとめた小冊子「令和3年度版鳥取県監査委員のあゆみ」には、監査基準への言及が見当たらない。「1 鳥取県監査委員のあゆみ」にある年表には、2年度に「2 業務適正化評価報告書審査意見の提出」の記載があり、元年度には「2 業務適正化(内部統制)体制の導入を踏まえた定期監査の見直し」の記載かあるが、監査基準の策定や施行などの記載は無い。

【報告範疇】高知県監査委員は、3E異状を報告する範疇を用意していない

 高知県監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第15条第4項で次のように説明している。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 3月26日付けで公表した監査報告では、「第2 監査の結果」の冒頭では「是正又は改善を要するものうち、強く改善を求める事項」という表現があるが、それ以降「是正又は改善を求める事項」に類した表現は無い。その「1 総括」にも報告する異状が「改善、是正等を要する不適切な事務処理」と表現されている。「強く改善を求める事項」については、内容が記載されているが、全て統制逸脱であり、短文である。
 どうも3E異状を報告する範疇は用意していないようである。

【業務説明】東京都監査委員は「東京都の監査のあらまし」で監査基準に言及

 東京都監査委員は5月20日に「東京都の監査のあらまし 令和2年実施結果」を公式サイトに掲出している。その「2 監査の観点・効果」で次のように監査基準に言及している。

 監査の実施や報告等について定めた「東京都監査委員監査基準」に基づいて、合規性、経済性、効率性、有効性の4つの観点から検証・評価を行っています。


 「3 監査委員が行う監査」でも次のように言及している。

 監査委員は、地方自治法などの法令や東京都監査委員監査基準により、様々な種類の監査を行っています。主な監査の種類は、次のとおりです。

【業務説明】滋賀県監査委員はパンフレットとしては監査基準に言及していない

 滋賀県監査委員は、4月19日に「滋賀県の監査2020」を公式サイトに掲出している。
 その「1 監査委員および事務局組織」では監査基準に言及することなく業務を説明している。
 監査基準への言及が有るのは「2 令和2年度監査計画」として引用している監査計画の「第1 趣旨」で、次のように言及している。

 この計画は、滋賀県監査基準(以下「監査基準」という。)第8条および滋賀県監査実施要綱第2に基づき、令和2年度監査の実施に関し必要な事項を定める。


【業務説明】新潟県監査委員はパンフレットで監査基準に言及

 新潟県監査基準総務省監査基準案に倣っているが、新潟県監査委員は4月16日に公式サイトに「令和3年4月 新潟県の監査」[PDFファイル/1.84MB]を掲出した。その「Ⅰ.監査制度の概要」には「監査委員とは」の次に「監査基準」という項を立てて次の説明をしている。

 地方自治法の一部改正により、令和2年4月1日から、監査委員は監査基準を定め、これに従って監査等を実施することとなりました。
 新潟県監査委員では、令和2年2月25日開催の監査委員協議会で、新潟県監査基準を決定、同年4月1日に施行しました。
 監査基準は、法令に基づき監査委員が行うこととされている監査等を実施するに当たっての基本原則であり、令和2年4月1日以降はこれに従って監査等を行っています。


 続いて、コラムで次の説明を行っている。

<参考>平成29年地方自治法改正
 地方自治法等の一部を改正する法律(平成29年法律54号)による地方自治法改正の主な目的の一つは、監査制度の充実強化で、監査基準策定の義務付けのほか、勧告制度の創設、議選監査委員の選任の義務付けの緩和、監査専門委員の創設などが行われました。
 また、内部統制制度の整備、運用が知事等に義務付けられ、長が作成する内部統制評価報告書審査が監査委員の新たな業務として加わりました。


 さらに「監査基準のポイントは?」「監査基準施行後の監査は?」という項を設けて監査基準について説明しているが、報告基準を意識した説明はない。

【報告範疇】さいたま市監査委員には報告範疇の概念がない

 さいたま市監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第17条第4項で次のように「是正又は改善が必要である事項」と表現している。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 しかし、4月30日付けの監査報告の「6 監査の結果」では、冒頭で次のように記載しており、「是正又は改善が必要である事項」という表現は用いられていない。

  おおむね適正に行われているものと認められた。ただし、事務の一部に次のとおり改善を要する事項が見受けられたので、その措置を講じられたい。


 「次」には「(1)」から「(5)」まで5項目が列挙されていて、「(4)」までは財務事務の分類で内容は統制逸脱であり、「(5)」は「行政事務(行政監査)」の標題の下に3件の統制不備が報告されている。その統制不備の件名の後ろには「意見」という表現が括弧書きで付してあるが、「6 監査の結果」の一部を構成しているので10項合理化意見と解することは困難だが、「意見」でないものを示す用語もないので「意見」という報告範疇を用意しているとも解し難い。よって、報告範疇については不明と判断せざるを得ない。

【報告範疇】愛媛県監査委員は報告範疇を用意していない

 愛媛県監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第15条第4項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 しかし、愛媛県報に記載された監査報告にも、公式サイトに掲出した監査報告にも「是正又は改善が必要である事項」の表現は無い。前者の「(監査の結果)」の冒頭は次のようになっている。

 令和元年度における予算の執行その他について、それぞれ監査を実施したところ、おおむね良好であったが、次の事項が認められた。


 そして、収入未済と交通事故による損害の発生という不本意事象を列挙しているだけで、統制逸脱の指摘もない。また、後者の監査報告の「6 監査の結果」は次のようにな記載があるだけである。

 監査対象機関に対し監査の着眼点及び監査の実施内容のとおり監査を実施したところ、重要な点において監査基準第 15 条第2項第1号に定める事項が認められないものがあったので、令和2年8月4日付け公表第 10 号のとおり公表を行った。
 なお、令和2年8月4日付け公表第 10 号以外の事項については、重要な点において適切に執行されていた。

【報告範疇】和歌山県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇を用意していない

 和歌山県監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第15条第4項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 しかし、監査報告では「是正又は改善が必要である事項」という表現は無く、「4 監査の結果」は次のように記載されている。

 上記のとおり監査した限りにおいて、監査の対象となった事務(以下「監査対象事務」という。)の執行は、重要な点においておおむね適正と認めた。
 ただし、下記の機関の監査対象事務の執行については、重要な点において著しく妥当性を欠くと認められる事項を指摘するとともに、その他妥当性を欠くと認められる事項を注意した。
 なお、その他改善を要すると認められる軽微な事項については、その都度指導を行った。
(1) 指摘事項
 〔略〕
(2) 注意事項
 〔略〕


 すなわち、妥当性の程度によって「指摘事項」と「注意事項」という二つの範疇を用意しているだけで、統制逸脱とは別に3E異状を報告する範疇は用意していない。また、事案の記載も簡単であり、3E異状の報告は困難である。

【報告範疇】愛知県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇を用意していない

 愛知県監査委員は、監査報告に記載する異状について、監査基準第15条第3項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合には、その内容を第1項第6号の監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして、令和2年9月2日に提出した監査報告で、この異状について次のように区分すると説明している。

○ 指摘事項
 ① 法律、政令、省令、条例、規則、規程、要領等又はこれらの運用解釈に違反するもののうち是正又は改善を要すると認められるもの
 ② 県に損害又は損害賠償責任が生じている事故等のうち是正又は改善を要すると認められるもの
 ③ 経済性、効率性又は有効性の観点から是正又は改善を要すると認められ るもの
 ④ その他是正又は改善を要すると認められるもの
○ 検討事項
 ① 問題点又は疑問点がある場合で、是正又は改善に向けた検討を要すると認められるもの
 ② 指摘事項を踏まえ、制度の在り方、運用等について是正又は改善に向けた検討を要すると認められるもの


 すなわち、3E異状を統制逸脱と同じ範疇で報告するとしている。これでは、事案の文章を長文にする慣行が無い限り、3E異状の報告は困難である。
 この監査報告には、18件の異状が報告されており、それぞれに観点が付されているが、すべて「合規性」と表記されている。

PFI事業に関するレポート

 建通新聞サイトが5月17日に掲出した「「PFIでコスト高に」会計検査院が指摘」は、会計検査院が、国の各府省が実施したPFI方式を導入した47事業について試算した結果、従来方式の方が経済優位性が高かった事業が少なくとも6事業あり、VFM(バリュー・フォー・マネー)の評価に金利情勢を考慮するなど、実情に合った判断を下すよう求めていると報じる。記事によると、2002~18年度までに11府省がPFIを導入した76事業のうち、事業者選定時のVFM算定のプロセスを確認できた47事業を調査したところ、従来方式の方が経済的に優位になったものが、このうち少なくとも6事業あったとの由。会計検査院では、サービス購入型のVFM評価に当たり、金利情勢を考慮した割引率を設定するよう各府省に求めた他、内閣府に対して『VFMガイドライン』を改定するよう要求したと記事は伝える。この他、サービス購入型のPFI事業で、SPC(特別目的会社)の財務状況が悪化し、債務不履行となるケースや公共施設の維持管理に不具合が生じるケースが増えているとも指摘し、各府省にSPCの財務状況を継続的に監視することや、公共施設の不具合を解消する修繕を適切に行うよう求めたという。
 取り上げているのは、5月14日の会計検査院のレポート「国が実施するPFI事業について」であり、会計検査院サイトに次が掲出されている。
概要(PDF形式:71KB)
報告のポイント(PDF形式:308KB)
本文(PDF形式:2,536KB)

【報告範疇】神奈川県監査委員は統制逸脱とは別に3E異状を報告する範疇を設けて報告している

 神奈川県監査委員は、異状報告について、その監査基準第15条第3項を次のように規定している。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして、公式サイトに監査基準と並べて「監査等実施要領」を掲出し、その「第6 監査の進行」に「4 監査の結果」という項を設けて次のように定めている。

⑴ 監査(財務監査、行政監査及び財政援助団体等監査をいう。4において同じ。)の結果、指摘(出先機関の監査における本庁機関に対する指摘を含む。)したもの(以下「指摘事項」という。)は「不適切事項」と「要改善事項」に区分して「監査の結果に関する報告」に記載する。
 また、監査の結果に基づいて、組織及び運営の合理化に資するため、特に付言する必要がある場合には法第 199 条第 10 項の規定に基づき、組織及び運営の合理化に資するための意見(以下「合理化意見」という。)として「監査の結果に関する報告」に添えて提出する。このほか、指摘事項には至らないものの注意する必要があるものは「注意事項」とする。
⑵ 「不適切事項」とは、次のいずれかに該当すると認められる事案で、是正、改善等の措置状況の報告を求める必要があるものをいう。
 ア 法令等に違反すると認められる事案
 イ 予算目的に反していると認められる事案
 ウ 不経済な行為又は損害が生じていると認められる事案
 エ 事務処理等が適切を欠くと認められる事案
⑶ 「要改善事項」とは、次のいずれかに該当する事案で、是正、改善等の措置状況の報告を求める必要があるものをいう。
 ア 経済性、効率性又は有効性の観点から改善が必要と認められる事案
 イ 事務・事業の執行に当たり、今後、改善又は見直しが必要であると認められる事案
⑷ 「注意事項」とは、⑵のアからエまでに掲げる事案のうち、今後の事務事業の執行に当たって注意すべきもの及び⑶のア又はイのいずれかに該当する事案のうち、是正、改善等の措置状況の報告を求める必要のないものをいう。
⑸ 監査の結果に関する報告における指摘事項のうち、知事等の執行機関において特に措置を講ずる必要があると認める事項については、当該執行機関に対して、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
⑹ 監査の結果(合理化意見及び⑸に基づく勧告の有無等を含む。)については、事務局長から所管局長等に通知する。


 つまり、統制逸脱を「不適切事項」として報告し、それとは別に3E異状を「要改善事項」として報告するとしている。
 なお、公式サイトでは、「監査結果の区分」というページを設け、「監査の結果、是正、改善等の必要があった事案は次に区分して整理しています。」と説明し、「不適切事項」「要改善事項」「注意事項」という三つの区分について「該当項目」と「報告及び公表」を説明している。
 令和2年10月8日の監査報告では、「第7 監査の結果」の「3 要改善事項」で「要改善事項の4件を、指摘した事由の別に掲げると次のとおりである。」とした上で、「⑴ 経済性、効率性又は有効性の観点から改善が必要と認められる事案」に「ア 厚木水道営業所伊勢原分館の機械警備業務委託に関する件」「イ 文化遺産課収蔵センターの機械警備業務委託に関する件」(2件)「ウ 特別展の開催に際して出版・販売する図録の作成遅延に関する件」を掲出している。いずれも、問題視した実状の要旨を記載した上で、4段落以上の文章を費やして改善方向を示している。問題視しているのは、長期継続契約への未移行、特別展の図録作成の遅延である。

大阪市監査委員は統制機能監査に特化している

 大阪市監査委員は独特の監査を行っている。例えば、令和元年度監査委員監査総括報告書をみても、監査箇所毎に定期監査を行うという発想はなく、リスクがあると判断した事務事業を取り上げて、その事務事業について危惧されるリスクを着眼点に設定し、その着眼点に従って関係する監査箇所を監査する、というスタイルを採っている。
 そこで着眼しているポイントは、執行が期待どおりに行われているか、という執行の適正性の確保の観点であり、言葉を換えれば、統制機能監査に特化していると言える。その過程で公的資源の実状に違和感を感じて進化展開するということは困難と思われる。もっとも、必要に応じて随時監査を行っており、この監査で3E監査を行う可能性はある。
 いずれにせよ、最高統制責任者の代行性が高い監査〔監査報告で監査根拠として地方自治法第199条と表現する監査〕を行っており、他の監査委員が行っている異状発掘などは行っていない。すなわち、大阪市監査委員監査基準の報告基準とは乖離した監査を行っている。ちなみに、大阪市監査委員は全国の市の監査委員で構成される全国都市監査委員会の会長であり、地方自治法で監査基準が規定される前に、規範性のある統一的な監査基準を作成していた。

【報告範疇】香川県監査委員は3E異状を報告する範疇はあるが文章量が不足

 香川県監査委員は、「香川県監査基準に関する規程」〔自分で定める規程なので、このネーミングの方が公式文書としては正しいと思う。〕と名付けたその監査基準の第16条第4項で次のとおり定めている。 

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を第1項第6号の監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 この「是正又は改善が必要である事項」が従前からの「指摘事項」等であると認識していることを5月7日付けの監査報告の「4 監査の結果」の冒頭文章のなお書きで次のように記載した上で「(1) 指摘事項」「(2) 指導注意事項」「(3) 検討指示事項」の項を置くことで示している。

 なお、規程第16条第4項に規定する是正又は改善が必要であると認められる事項は、次のとおりであり、その他の軽微な事頃については、その都度、関係機関に口頭により指導を行った。


 香川県監査委員が3月に公にした「令和元年度監査年報」では「Ⅰ 定期監査」「1 指摘事項等の件数」で組織別の「指摘事項」「指導注意事項」「検討指示事項」の件数を示した上で 、次の「用語の説明」を記載している。

1 指摘事項
 指摘事項は、財務に関する事務の執行及び経営に係る事業の管理が適正でないもので、法令等に違反した執行となっているもの、歳出予算の目的及び範囲に違反した執行となっているもの、著しく不経済又は非効率的執行となっているものなどをいう。
2 指導注意事項
 指導注意事項は、財務に関する事務の執行等が適正でないもので、指摘事項に当たらないものをいう。ただし、内容が軽微なもので、予備調査時における事務局職員による指導で足りると認められるものを除く。
3 検討指示事項
 検討指示事項は、法令の趣旨や制度の運用実態などから、事務事業を適正かつ効果的に実施するうえで、今後、検討が必要と判断されるものをいう。


 これによると「指摘事項」と「指導注意事項」は統制逸脱であり、それとは別に3E異状を報告できる「検討指示事項」を用意していることになる。ちなみに、この元年度監査で報告した検討指示事項は「借入れた駐車場の敷金について、債権としての管理を検討する必要がある。」という統制不備の1件である。文章量からして、この報告慣行では3E異状の報告は困難である。

【報告範疇】奈良県監査委員は統制逸脱とは別に3E異状を報告する範疇を用意している

 奈良県監査委員は3月2日付けで公表した監査報告の「5 監査の結果」の「(1) 部局別指摘事項等件数一覧」と「(2) 指摘事項等の内容別」との間に、次の「定期監査の結果の取扱い基準」を記載している。

1 指摘事項
  監査委員が違法不当な事項として認め、その是正又は改善を求めるもの
 ①法令等に違反するもののうち重大なもの
 ②書類の隠匿、改ざんその他故意による違反を行っているもの
 ③重大な過失又は著しい怠慢によって誤りを生じているもの
 ④著しく不経済なもの又は著しく損害が生じているもの
 ⑤著しく非効率なもの又は著しく妥当性を欠くもの
 ⑥著しく有効性を欠くもの
 ⑦誤りを生じている事項で一定額(一定数値)以上のもの
 ⑧前回の指摘又は注意事項について、是正・改善されていないもの
 ⑨上記のほか、特に指摘すべき重大な事項であると認められるもの

2 注意事項
  監査委員がその事項につき、指摘の内容までには至らないが、重要と認め、その是正又は改善を要するもの
 ①過失に起因する事項等で、指摘の程度までには至らないが、是正又は改善を要するもの
 ②指摘の区分に該当する事項であるが、その原因又は経緯にやむを得ない事情があるもの、又は監査対象機関自身において誤りを発見し、かつ、速やかに是正されているもの
 ③誤りを生じている事項で、指摘事項の額、数値未満など指摘の内容には至らないが、重要なもの
 ④前回口頭指導した事項で措置、是正、又は改善されていないもののうち重要なもの

3 意見事項
  監査委員が、制度の運用及び事務事業の執行方法等について、合規性、経済性、効率性、有効性の見地等から今後見直しの必要があると認めるもの
 ①合規性、経済性、効率性、有効性の見地等から検討が必要な事項
 ②改善を求める事項の発生の頻度が高いもので、その発生が制度やその運用に起因 している事項で制度やその運用の改善の検討が必要な事項


 つまり、奈良県監査委員は、統制逸脱を「指摘事項」又は「注意事項」として記載し、3E異状を「意見事項」として記載しようとしている。
 ただ、この監査報告に記載されている「意見事項」は1件で、内容は不本意事象(火災による損害の発生)の対策を求めるものであって3E異状を取り上げた事案ではない。

【報告範疇】静岡県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇を用意している。

 静岡県監査委員は、公式サイトに「定期監査等の結果の種類(令和2年度以降)」の項を設けて「定期監査等の結果の種類は次のとおりです。なお、結果については議会及び知事等に報告し公表しますが、内容によっては機関名を特定せずに報告・公表する場合があります。」と説明した上で、次のような説明を行っている。

指摘:次に掲げる事項に該当し、その程度が著しいもの及びその他指摘すべき重大な事項があると認められる場合に出される結果です。
 a法令・条例・規則に違反している事項
 b収入確保に適切な措置を要する事項
 c予算を目的外に支出している事項
 d著しく不経済な支出又は著しい損害を生じている事項
 e既に注意したもので是正又は改善がされていない事項
注意:指摘に掲げる事項に該当し、その程度が軽微なもの、既に指導したもので是正されていない事項及びその他特に注意すべき事項があると認められる場合に出される結果です。
意見:組織及び運営の合理化や事務・事業の適正化など多様な観点から必要があると認められる場合に出される結果です。


 この説明によれば、統制逸脱は「指摘」又は「注意」として記載し、3E異状は「意見」として記載することになる。ただ、監査基準第15条第3項では異状報告について次の規定を置いており、それとの関係は明確ではない。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして、4月2日付けの監査報告には4件の意見が記載されているが、いずれも統制不備である。

【報告範疇】仙台市監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇は用意していない

 仙台市監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第21条第4項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして令和2年7月8日に公表した監査報告では、「5 監査の結果」の冒頭に「事務事業については,一部に改善を必要とする事例が見られたが,おおむね適正に執行されていると認める。」と記載していて、「改善を要する事例」として2事案を挙げている。基準の{事項}という表現を何らかの理由で「事例」と言い換えているように思える。2事案の内容は統制逸脱であり、3センテンスで当為と事績を示している。この文章量であれば3E異状の報告は可能であるが、昨年の報告例はない。
 ちなみに、定例監査結果を示したページには、監査基準制定前の「指摘事項」「意見」という表現が残っている。

【報告範疇】沖縄県監査委員は3E異状を統制逸脱と区別して報告する範疇は用意していないが、報告例はある

 沖縄県監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第19条第4項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして、「令和元年度定期監査の結果報告書」の「第2 監査の結果」の冒頭では、次のように記載している。

 前記の記載事項のとおり監査した限り、重要な点において、監査の対象となった事務が法令に適合し、正確に行われ、最少の経費で最大の効果を挙げるようにし、その組織及び運営の合理化に努めていると認められた。なお、当該事務の一部について是正又は改善を要するものを指摘事項として掲記した。
 指摘事項の概要は、次のとおりである。
 指摘事項の詳細については、「第4 部局別の指摘事項」に記述している。


 つまり、報告する異状の範疇は「指摘事項」だけということになる。これでは、記載を長文とする慣行がない限り、3E異状を報告することは困難になる。しかし、単純ではあるが、次の3E異状〔公的資源に活用の余地がある実状。単純なものは追加調査を必要としない〕は報告されていた。

 中城湾港(新港地区)警備業務委託(その1、その2)(契約額計35,368,800円)について、年間を通して契約できるにもかかわらず、合理的な理由も無く6箇月ごとに分割し契約を締結していた。

【報告範疇】岐阜県監査委員は3E異状を報告する範疇はなく、報告例もない。

 岐阜県監査委員は、監査報告に記載する異状について、その監査基準第15条第4項で「監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。」としている。
 公式サイトでは、異状を報告する範疇を三つに分けて次のように説明している。

指摘事項:是正又は改善を求める事項のうち、その程度が重大なもの
指導事項:是正又は改善を求める事項
検討事項:事務の執行の適正化のため検討を求める事項又は他の機関の監査の結果として所管課に対し是正若しくは改善を求める事項


 この説明では、三つの範疇のうち「検討事項」のうち「事務の執行の適正化のため検討を求める事項」は、監査基準に定める「是正又は改善を求める事項」には該当しないことになり、その位置付けが不明確であり、また、「事務の執行の適正化」のための検討を求めるのであれば、当該事務の改善を求めることと同義であり、その意味で不明瞭である。3Eの観点から検討を求めるという原案を、3Eを理解していない監査委員が修正した可能性も考えられるが、実際には3E異状は報告されていない。
 直近の3月24日付け監査報告では、13 件の指摘事項と11 件の指導事項を報告しているが、その内容は統制逸脱と事故発生に伴う支出などの不本意事象であり、3E異状はない。
 平成2年度の検討事項は2件であり、これは10月28日付けの監査報告に記載されているが、異なる統制実務者に同一内容の検討を求めたもので、その内容は統制逸脱の常態化について改善を求めるもので統制不備の懸念を示したものである。

【報告範疇】東京都監査委員は統制逸脱とは別な範疇で3E異状を報告している

 東京都監査委員は、その監査基準第25条第2項で、監査報告に監査の結果として記載する事項について次のように定めている。

 監査委員は、指摘事項又は意見・要望事項が認められる場合は、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努める。


 すなわち、「指摘事項」と「意見・要望事項」という二つの報告範疇を用意している。このため、3E異状を統制逸脱とは別の範疇で報告することができる。
 2月9日付け監査報告では「第2 監査の結果」「1 監査結果の概要」の冒頭を次のように記載しており、二つの報告範疇を合わせた概念として「是正・改善すべき事項」の表現を用いている。

 監査の結果、是正・改善すべき事項が認められたので、表2及び表3のとおり、19局に対し、69件の指摘、7件の意見・要望を行った。


 この7件の「意見・要望事項」のうち5件は統制不備であるが、「外国人向け交通安全教育動画の有効活用について」、「災害時における都営地下鉄利用者の一時保護対策について」の2件は、監査で発掘した3E異状である。また、指摘事項の記載も充実しており、3E異状を指摘事項として報告することも可能である。
 なお、東京都監査委員は、平成25年から現在までの各種監査で行った指摘、意見・要望事項及び知事等が講じた措置を検索するシステムを公式サイト上で運用しており、上記の2件の3E異状も、そこで読むことができる。

【報告範疇】岡山市監査委員は統制逸脱とは別に3E異状を報告する範疇を用意している。

 岡山市監査委員は、監査報告に記載する異状について、監査基準21条第4項で次のように定めている。

 監査委員は,是正又は改善が必要である事項が認められる場合,その内容を監査等の結果に記載するとともに,必要に応じて,監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 2月5日付けで提出した監査報告では、「4 監査の結果」の冒頭を次のように記載している。

 監査した結果,次のとおり一部に改善を要する事項が認められたので,それぞれ必要な措置を講じ,今後の事務処理に万全を期されたい。
 また,次のとおり意見を付することとしたので,今後における事業運営にあたり配慮されたい。
 その他については,今後の処理方法を指導した軽易な事項はあったが,おおむね適正に処理されていた。
 なお,改善済みのもの及び今後の処理方法について指導した軽易な事項は,記述を省略した。


 そして、「指摘事項」と「意見」の項目を立てて、報告事案を記載している。上の文章と照らし合わせて読むと、「改善を要する事項」として報告書に記載する事案を「指摘事項」とし、執行者に対して今後の執行で配慮を希望する事項を「意見」としているようである。3E異状の報告は、不作為の改善を期待して公的資源活用不足の実状を報告するものであるから、「意見」に馴染む事案ということになるので、統制逸脱とは別に報告する範疇を用意していることになる。
 実際に報告されている事案は、「指摘事項」として収入未済、「意見」として高い繰り越し率であり、既知の不本意事象であって発掘又は調査した付加情報は無い。

【報告範疇】鹿児島県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇を持たない

 鹿児島県監査委員は、その監査基準第17条第4項で次のように定めている。

 監査委員は,是正又は改善が必要である事項が認められる場合,その内容を監査等の結果に記載するとともに,必要に応じて,監査等の過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 そして、「令和2年度 定期監査(前期:一般会計・特別会計)」の「2 監査の結果」「(1) 結果の概要」の冒頭で次のように述べ、「是正又は改善が必要である事項」を「指摘事項」と「文書注意事項」に分けて記載していることを示唆している。

 監査を実施した158機関の財務に関する事務の執行について,103機関においては,指摘事項及び文書注意事項に該当するものはなく,おおむね適正に行われていると認められたが,その他の55機関においては,次のとおり是正又は改善を要する2件の指摘事項や73件の文書注意事項があった。


 そして、この二つを次のように説明している。

指摘事項:法令,規則等に違反するもの又は著しく妥当性を欠く事実があると認められるもの
文書注意事項:指摘事項に至らない事項で,更に的確な事務の執行等を促す必要があると認められるもの


 したがって、この二つは程度の差違によって区分されており、鹿児島県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別な範疇で報告することはない。
 この報告に記載されている異状も、収入未済などの不本意事象と統制逸脱である。

【報告範疇】徳島県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇は用意していない

 徳島県監査委員は、2月5日付けの監査報告の「5 監査の結果」の冒頭を次のように記載している。

 監査の着眼点及び監査の実施内容のとおり監査を行った結果,重要な点において監査基準第15条第2項第1号に定める事項が認められないものについては,次のとおりである。


 この監査基準第15条第2項第1号は次のように規定している。

 前項第一号から第五号までの記載事項(‥)のとおり監査した限りにおいて,監査の対象となった事務の執行が法令等に適合し,正確に行われ,最少の経費で最大の効果を挙げるようにし,その組織及び運営の合理化に努めていること。


 報告範疇の名称は記載されておらず、3E異状を統制逸脱と同じ範疇で報告しようとしているようだ。実際に報告されているものは、ワンセンテンスの不本意事象とツーセンテンスの統制逸脱になっている。
 なお、令和2年11月13日の監査報告では、「5 監査の結果」の冒頭を次のように記載している。

 改善を要するものは,次のとおりである。
 なお,「物品の管理」について,昨年度に引き続き重点事項として監査を実施したが,物品出納簿への記載漏れや誤り,郵便切手受払発送簿の記載誤りや決裁漏れなど基本的事務に関する遺漏や誤りが散見された。各機関は,改めて会計規則等に基づく事務処理を再確認するとともに,複数人によるチェックはもとより,管理職員による定期的な確認などに努められたい。

【報告範疇】兵庫県監査委員は統制逸脱とは異なる報告範疇を用意している

 兵庫県監査委員は、監査の結果として監査報告に記載する事項としては、次の監査基準第14条第2項を定めているだけである。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 直近の定期監査報告では、「第2 監査の結果」の「1 総括」の冒頭で次のように述べている。

 今回の監査の結果、指摘事項が28機関・3団体において99項目あった。内容面では収入事務が38項目、経理処理事務が14項目で、両事務で全指摘項目の過半数を占めている。
 収入事務については、全庁を挙げての徴収努力により県税及び県税に付随する税外収入(以下「県税等」という。)をはじめとする収入未済額が減少しているものの、依然として多額となっている。
 経理処理事務については、地方公営企業及び財政的援助団体等の複式簿記に係る経理処理誤りであり、貸倒引当金繰入額の計上誤り等が発生している。
 加えて、補助事業等において、補助対象外経費が含まれた実績報告書を適正とするなど、内部管理体制の適正な運用が望まれる誤りが多数見受けられた。
 上記を踏まえて、事務執行を適正・適切に推進していく上で特に必要と思われる項目を「留意・改善・要望事項」として取りまとめたので、特段の配意を願いたい。


 この文章からは、異状を報告する範疇として「指摘事項」と「留意・改善・要望事項」の二つがあること、「指摘事項」として不本意事象と統制逸脱を報告していること、統制不備は「留意・改善・要望事項」で報告することが読み取れる。すなわち、統制逸脱とは別な範疇を用意している。
 実際に報告されているものは、既知の不本意事象を解消する一層の取組を求めるもの、統制逸脱の再発防止を求めるものであり、3E異状の報告はない。

【報告範疇】千葉県監査委員は3E異状を統制逸脱とは別に報告する範疇を有さず、最近の報告例もない

 千葉県監査委員は、「千葉県の監査(令和元年度版) 」において、監査の結果は「指摘事項」、「注意事項」及び「指導事項」に区分するとし、その基準を次のように説明している。

ア 指摘事項
 (ア)法令等の重大な違反や不正な行為があった場合その他著しく適正を欠くと認められる場合
 (イ)経済性、効率性及び有効性の観点から著しく不適切又は不合理であると認められる場合
 (ウ)前回の監査において注意事項とした事項について改善の効果が認められない場合
イ 注意事項
 (ア)法令等の違反があった場合その他適正を欠くと認められる場合
 (イ)経済性、効率性及び有効性の観点から不適切又は不合理であると認められる場合
 (ウ)前回の監査において指導事項とした事項について改善の効果が認められない場合
ウ 指導事項
 (ア)事務処理等について適正を欠くものがあると認められるもののその内容が軽微である場合
 (イ)事務処理等について違法ではないものの改善することにより適正な事務の執行が図られると認められる場合


 すなわち、3E異状を統制逸脱と同一の範疇で報告するとしている。この場合、長文の慣行が無い限り、3E異状の報告は困難である。
 2月2日付けの監査報告では、指摘事項と注意事項を個別に記載することとしているが、指摘事項はなく、注意事項はワンセンテンスでの説明に止まっており、これでは3E監査は困難である。

【報告範疇】福島県監査委員は3E異状を報告する範疇はなく、報告例もない

 福島県監査委員は、その監査基準第15条第4項で次のように定めている。

 監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の 結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。


 2月19日付けで公表した監査報告では、監査結果を示す表を「指摘事項」と「指導事項」に分類した上で、それぞれの表に「対象機関」と「是正・改善を求めた事項」の欄を設けて、事案を説明している。「指摘事項」と「指導事項」の説明はないが、内容は統制逸脱である。ちなみに、「是正・改善を求めた事項」という表現は、監査基準に基づいて使用されているようで、令和2年2月14日付けの監査報告には無い表現である。
 興味深いのは、1年間の監査について説明する「令和2年度監査のあらまし(令和3年3月)」という文書である。この文書は前例踏襲によって実務ベースで作成されているようで、前年のものと同様の構成であり、2年4月1日から施行している監査基準の記載は無い。
 この文書で、福島県監査委員は、「4 監査結果等の概要」の冒頭で「監査は、合規性及び正確性の観点に加え、経済性(Economy)、効率性(Efficiency) 及び有効性(Effectiveness)の観点(3E監査)から実施しています。」としている。そして、その「(1) 財務監査」「①定期監査 普通会計」で、1年間に報告した62件の異状を、「歳入」など統制規範の別に分類した表を示している。その次に、「○3E(経済性、効率性及び有効性)区分別整理表」という項を置き、「監査の結果、指摘等となったものを3Eの観点から分類すると次のとおりです。」という説明とともに、62件のうち23件を分類して示している。その分類は次のように区分されている。

経済性 歳出  契約の事務の誤り
     歳出  支払額算定の誤り
     歳出  職員手当の支給誤り
効率性 歳出  報酬、報償費及び旅費の支出遅延
     財産  重要物品の処分不適正
有効性 歳出  債務負担行為の手続不適正
     歳出  物品の購入•払出の手続不適正
     事務  個人情報の管理不適正


 おそらく、契約段階で不経済が生じないように設定されている規範に違反している統制逸脱を経済性からの指摘として整理しているのであろう。このことは、福島県監査委員が知見教示的な3E監査を理解していないことを示しているように思える。

【報告範疇】岐阜県監査委員は、別途の報告範疇無く、最近の報告例もない

 岐阜県監査委員は、その監査改革指針(平成21年3月27日改訂)の「3 透明性の向上 ~県民に開かれた監査を目指して~」「(1) 監査結果等の公表内容・手段の充実」「ア 監査結果の公表内容の充実」で、「個別に公表する事項の内容が、定型的な表現であまり具体的でないため、不適正・不備事項の事態の程度等が伝わりにくい」などを問題として、次のような改革案を示している。

①個別に公表する事項は、県に損害を生じさせたものや、不当性の高いもの、県に与える影響の大きいものなど、監査委員が公表すべきと判断した重大な事項に厳選する。
②個別に公表する事項には、是正・改善すべき事態がより県民に分かりやすくなるよう、その原因や背景など必要な説明を加える。
③監査結果は、個別に逐次決定・公表したもののほか、必要に応じて年間で総括して公表するなどの工夫をする。


 監査結果の取りまとめに当たっては、事案の規模に関わりなく取り上げる事案毎に監査要員の負担は同様であるため、一定の監査資源を前提とする限り、些事は現場注意で済ませて切り捨てていくことが監査効率上、必要とされるので、上記の①は的確な方向である。また、監査の有効性を確保する上では、牽制抑止効果を充実させるために②は必要である。さらに、指摘の傾向について監査要員の情報共有を図るためにも、③は効果的な方策と評価できる。
 この改革案を策定している岐阜県監査委員は、監査基準第15条第4項で「監査委員は、是正又は改善が必要である事項が認められる場合、その内容を監査等の結果に記載するとともに、必要に応じて、監査等の実施過程で明らかとなった当該事項の原因等を記載するよう努めるものとする。」と定めている。
 そして、2月24日付けで公表した監査報告では、三つの報告範疇を次のように説明している。

指摘事項:是正又は改善を求める事項のうち、その程度が重大なもの
指導事項:是正又は改善を求める事項
検討事項:事務の執行の適正化のため検討を求める事項又は他の機関の監査の結果として所管課に対し是正若しくは改善を求める事項


 この説明からは、統制逸脱を「指摘事項」又は「指導事項」とし、統制不備を「検討事項」とするように読め、3E異状を報告する範疇を用意していないと理解できる。
 また、報告されている事案も統制逸脱と不本意事象(交通事項による損害賠償と毀損による修繕料の支払)である。2年12月25日付け監査報告2年11月30日付け監査報告2年10月28日付け監査報告も同様である。
 なお、10月28日付け監査報告には、土地改良事業における費用便益計算の誤りを取り上げている統制逸脱事案があるので特筆しておく。
 また、報告の姿勢に疑問を感じた類似事案が複数あったので、次の11月30日付け監査報告の事案で疑問点を記録しておく。

 旅費の支出事務において、職員は旅費システムに旅行命令入力を行った後、旅行命令の内容に誤りがあったことに気付き、新たな旅行命令入力を行った。その後、当初に入力した旅行命令について中止の処理を行わず、両方の旅行命令に対し復命入力し、承認を受けたことで、1件666円が過払となっていたので、速やかに措置するとともに、今後は適正に処理されたい。


 過払いとなっていたことの指摘であるならば、「重複した旅行命令案の入力に承認を与えたことで、」と表現すべきだろう。そして、重複した旅行命令案に警告を出さないシステムを指摘すべき事案と思われる。
ブログ内検索
カテゴリー
参考リンク
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
監査関係ブログ
【】内はカテゴリー ↓トップはライブドアニュース
月別アーカイブ
RSSフィード
プロフィール

reticent_auditor

  • Author:reticent_auditor
  • 寡黙な監査人
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる